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  • #1261
  • 2021.04.02

社会を変える主体者は「市民」、市民活動への「参加」と「協力」で自治型社会の危機を救おう 〜大阪ボランティア協会 早瀬 昇 理事長へのインタビュー〜

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今回はNPO法の成立に多大なる貢献をなされた大阪ボランティア協会 早瀬 理事長に貴重なお話をうかがうことができました。これまでの、そしてこれからの自治型社会における市民活動、とりわけボランティア活動の課題の本質を鋭く、熱く、わかりやすく語っていただきました。

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【早瀬 昇 氏のプロフィール】 1955年、大阪府生まれ。大学で電子工学科を専攻するも、交通遺児家族支援、地下鉄のバリアフリー化、市民活動情報誌の編集などの活動に次々に参加。大学卒業後、フランス、ベルギーの障害者グループホームでケアワーカーを経験した後、1978年に大阪ボランティア協会に就職。1991年から2010年まで事務局長。 「市民の参加の力」で社会問題を自治的に解決する環境整備をライフワークとし、現在、日本ファンドレイジング協会副代表理事、日本ボランティアコーディネーター協会運営委員、同志社大学政策学部客員教授なども務める。 著書に『「参加の力」が創る共生社会−市民の共感・主体性をどう醸成するか』『寝ても覚めても市民活動論』など。大の阪神タイガースファン。赤ワイン党。

    この記事のポイント

  • 公共的な課題の解決は役所であったのが、NPO法によって市民が公益活動を担うことができるようになり、より横断的で機動的、多彩になった。
  • 一方で、国が民間へ委託した福祉サービスの担い手としてNPO法人も受け皿の一つになったことで、市民が参加していないNPO法人が全体の4割に達するようになった。
  • NPO法の本来の目的は市民活動の促進であり、その市民活動の根幹は市民の「参加」と「協力」。
  • 参加と協力の手段のうち、ボランティア運営は寄付に比べてずっと難しい。
  • ボランティアは参加者の特性に見合った、参加したくなり、参加しやすいプログラム開発が肝要。
  • 一方で、課題を抱える当事者や市民側の顧客化が進行しており、社会の変革に主体的に関わらなくなってきている。
  • 今後自治型社会は危機に瀕する可能性が高い。市民が社会を変える主体者であることを実感できる機会の提供が不可欠。

NPO法成立の経緯とNPOの現状

− 現在5万を超える団体がNPO法に基づき法人格を得て非営利活動に取り組んでいます。これ程までの規模に成長した背景を、NPO法を抜きにして語ることはできません。そのNPO法が制定される以前はどのような状況だったのでしょうか。

NPO法ができるまでは公共的な課題の解決は役所の仕事というイメージが強く、国が公益性の中身を決めて、その内容も国が管理する仕組みになっていました。非営利の法人格付与は国の許可制とし、役所の裁量で可否を決めることが1898年施行の民法で規定され、その状況がNPO法成立まで100年間続いていました。私たちは阪神・淡路大震災以前からもっと自由に法人格が取れる社会の実現に向けて活動していましたが、この震災を契機に議論が加速し、1998年にNPO法を成立させることができました。

− NPO法が成立してから何が変わりましたか?

NPO法の成立により市民団体が法人として公益活動を担うことができるようになりました。以前であれば問題があれば役所に陳情していた課題の解決を、市民自身が担うことで、役所が行うよりも機動的で多彩に展開されるようになりました。今でこそ当たり前になっているクラウドファンディングのように多くの市民が市民活動を支える形態は、NPO法成立以前ではとてもまれでした。

そのほかには、以前は市民活動も縦割りで、福祉関係であれば役所の福祉関係部署と繋がった閉じた関係でした。しかし、分野を超えて市民活動全体を支えるこの法律の成立後、様々な組織が市民活動の向上のために横断的に協力し合えるようになりました。特に災害時にはその効果が顕著に現れました。

ただその一方で、世界的な新自由主義の流れを受け、介護保険のような公益的な福祉サービスを、効率主義の観点から市場に委ねる制度が生まれるようになってから、それらの制度の担い手として、NPO法人も利用されるようになってきました。その結果、市民が全く参加していないNPO法人も生まれるようになってきました。市民活動の基本は「参加」と「協力」です。にもかかわらず、ボランティアや寄付をほとんど募っていないNPO法人が全体の4割も占めるようになりました。この背景には、当時は非営利会社制度が無かったことも一因です。非営利会社制度が整った今、中小企業支援の助成制度も充実していることを考えれば、ソーシャルビジネスをするなら企業が良い、ということになるのではないかと思います。

これからの市民活動のポイントはボランティアマネージメント

− NPO法の本来の目的であった市民活動の促進に向けて必要なことはなんでしょうか?

ボランティアマネージメントですね。市民活動への参加と協力の方法は「寄付」と「ボランティア」ですが、寄付はボランティアに比べればマネージメントしやすいです。寄付はモノやおカネを扱いますが、ボランティアのそれはヒトです。ヒトは熱しやすく冷めやすい(自発性は揮発性)ですし、意に沿わないことに対して意見も出ます。無償ということの潜在的な難しさもあります。ボランティア自身も企画に参加できるようにしたり、多様な人々がそれぞれの志向を尊重し合いながら協力しあえるようにするなど、活動しやすい環境をきちんと整備しなければ、ボランティアの参加は成功しづらいのです。自ずとボランティアより手間がかからない…と受け止められて、寄付だけに偏る傾向になってしまいますよね。

− ボランティアを成功させるポイントは何でしょうか?

それは参加者が参加しやすいプログラムを開発することです。コロナ禍であっても成功しているボランティアプログラムがありますが、それは参加しやすいよう企画側が工夫をしているからです。一般市民の約7割は「機会があれば社会に貢献したい」という意欲があります。プログラムが参加しやすければ参加されるのです。

現在、大阪ボランティア協会では「ボランティアスタイル」と称するプログラムを実施していて、ビジネスパーソン向けに週末3時間だけで完結するプログラムを企画・実施しています。忙しいビジネスパーソンであっても3時間だけなら参加できます。アメリカにはビジネスパーソンに向けた短時間のボランティアサービスがたくさんあります。ペンキ塗りや草刈りなど、短時間で達成感が得られる活動は人気がありますよね。日本ではゴミ拾いのイベントをよく見かけますが、工夫次第で一段と面白くなります。国際的に展開されているビーチクリーンアップのイベントでは、世界中で同じ時期に同じ方法で拾い集めたゴミから海洋汚染の状態を測り、ゴミを出さないライフスタイルの重要性を考える活動をしています。つまり単に拾うだけでなく、学びも得られるのですね。こういった短時間・単発のプログラムはボランティア活動に参加する入口として適していると思います。

− 短時間・単発の活動は参加しやすい反面、俯瞰的に見れば社会的なインパクトが限られる市民活動になってしまうのではないでしょうか。

確かに一人の活動は小さな活動になってしまいますが、多くの方が参加すれば大きな力になります。長野市社会福祉協議会が学生の夏休みに合わせて学生向けのサマーボランティアプログラムを日本で初めて実施しました。一人の参加期間は3日程度でしたが、多くの学生に参加いただいたことで、施設にとってはとても大きな支援になったのです。

また、災害時の活動も象徴的です。参加される方の大半は単発ないし短期の活動ですが、とても多くの方が参加いただくことで、とても大きな力になります。ただし問題もあります。短期間に集中しやすいことです。しかしこれも受け入れ方の工夫で解消できます。それは目に見えていない、潜在ニーズを探すことです。阪神・淡路大震災の時にもとても多くの方々に参加いただきましたが、実は連日、前日に寄せられたニーズを大きく越えるボランティアが来てくださいました。そこで、たとえば、今、開いている店を調べ、その状況を伝える情報誌を作り、避難所に配る活動をボランティアと共に始めました。同様に今、開いているお風呂屋さん情報の収集・整理・広報など、ボランティアが担う活動をどんどん創っていました。こうした活動を創造するボランティアコーディネーション力が大切なのです。

− 災害時以外のボランティアは消極的なように思いますが、それはなぜでしょうか。

それは市民活動自体が窮屈な印象を与えているからです。市民活動には3つのバリアがあると思っています。①イメージのバリア、②選択のバリア、③自発性のバリアです。 ①イメージのバリア 市民活動はお地蔵さんのように、自己犠牲的な活動だと思う人もいます。やり始めたらずっとやらねばならない、文句も言ってはならないと思われがちです。 ②選択のバリア 参加したいプログラムを選べなければ、活動を始められません。 ③自発性のバリア ボランティアは自発的にやるものであって、無理やりお願いしてはならないのだ、と思う人もいます。しかしシニア層のボランティア参加のポイントは、「誘われること」です。シニア層の多くは未知の世界には不安が強く、長いキャリアもお持ちですから、今さら失敗したくないと感じています。誘われることでハードルが下がり、知り合いがいるので不安も減らせます。 これらのバリアを取り去るためにも、お試しや見学が許されるボランティアプログラムを企画するのが良さそうですね。

市民や課題を抱える当事者の顧客化

− 現在の市民活動の最大の課題は何でしょうか?

市民活動への参加が進んでいない、もしくは減少しているように思います。この原因はヒーローシステム、つまり、ソーシャルビジネスなどで時々見かけるスタイルですが、リーダーがスターになり、当事者は顧客として支援を受ける人になっていく。一方、タニマチ的に応援する人(主に寄付)が支える、という構図になっていて、当事者や応援者たちが陰に隠れてしまう。市民活動の本来のエネルギー源は、課題を抱える当事者、あるいはボランティアにあるんです。本来、当事者は顧客という客体ではなく、主体となるように支援しなければならない。しかし、企業のスタイルが良いとされると、顧客サービスを志向してしまう。一見、顧客として遇することは良いように思われますが、不満がある場合はクレームをぶつけるか、利用しない、参加しない、という側面もあり、結果益々、市民が主体的な立場に立てなくなってくる。

今後高齢化が加速し、介護離職が増えていく、市民の顧客化は進む、学生を含めた若い世代にも所得格差が広がり、社会参加への意識も二極化…。このままでは市民自治的な社会から、どんどん遠ざかっていく可能性が高いと思います。民主主義の根幹は住民自治、市民自治です。そこで自分たちが社会を変える主体者であることを実感できる機会を提供し、私たちの手で社会を少しずつ変えていくことができればよいなと思います。

市民活動の課題の本質を鋭く指摘いただき、ありがとうございました。市民が社会を変える主体者である、というご指摘は、社会の問題を社会の力で解決する弊社ウィライの理念、及びこのソシャティへの想いと一致します。皆様の活動の経験や知識をソシャティで共有し、互いの財産とすることで、市民活動の底上げを図っていきたいです。ソシャティのご利用をお願いいたします。 早瀬理事長、貴重なご提言を頂き、心より御礼申し上げます。 (2021.3.25 (株)ウィライ 浅田 崇裕@ZOOM)

キーワード

#早瀬 #ボランティア #市民活動 #NPO法 #大阪ボランティア協会 #顧客化

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