広告
- #1726
- 2021.10.28
“みんなちがってみんないい”共に生き合う社会を目指して 〜NPO法人 八ヶ岳福祉農園 山田 佳子(やまだ けいこ)代表へのインタビュー〜
- シェア
風光明媚な八ヶ岳の麓でハンディキャップを抱えた方々と共に無農薬・無化学肥料の農園を営むNPO法人 八ヶ岳福祉農園。「仮面の理事長」で親しまれる代表の山田さんが心がけるのは“コミュニケーション”と“観察”。その先にあるのは愛されているという安心感。利用者の笑顔溢れる、愛に満ちた活動のご紹介。
広告
- 無農薬・無化学肥料の農業を軸に、環境に配慮した循環型の社会を創ることに取り組む。
- 大切にしていることは相手を受容し、“生き合う”という精神。
- コミュニケーションと観察を重視し、それぞれの個性に合わせた対応を心がけることで利用者の表情が和らぐ変化が。
- 伝えたいメッセージは“みんなちがってみんないい”。社会からはじき出されても、どこかで必ず輝ける場所がある。
- 来春に現在の事業所をレストランにリニューアル予定。障がい者の雇用創出と経済的自立を目指す。
【この記事のポイント】
無農薬・無化学肥料の農業を軸に、環境に配慮した循環型の社会の創出へ
− NPO法人 八ヶ岳福祉農園で取り組んでいることについて教えてください。
NPO法人 八ヶ岳福祉農園(https://physalis8.com/)は2006年に立ち上げた法人で、就労継続支援B型の事業所として主に知的と精神のハンディキャップを抱えておられる15名(定員:20名)の方々の支援をしております。私は4年前にこの法人の代表に就きました。
法人立ち上げ当初から、無農薬・無化学肥料の農業を軸に、環境に配慮した循環型の社会を創ることに取り組んでいます。それはこの農園のポリシーとして今も大切に受け継がれております。
法人立ち上げ当初から取り組んでいるのが「食用ほおずき」の栽培です。直径2cm程の鮮やかな黄色い球形のほおずきは、マンゴーのようなトロピカルな風味が特徴の瑞々しい果実で、都心からの引き合いもある人気の商品です。オンラインからでも購入できますよ。
その他、これまでに諏訪湖の水草を堆肥化して畑に戻す事業や、松食い虫で枯れた松の木を伐採して薪として販売する事業に取り組んできました。いずれの事業も地球環境に負荷を与えない、循環型の社会の創出につながるよう、心がけています。
コミュニケーションと観察が相手に安心感を与え、信頼関係の構築に
- 法人を運営する中で大切にしていることは何ですか?
相手を受容し、“生き合う”という精神ですね。私はかつて愛知県で製造業に携わるエンジニアでした。仕事はとても面白く、その経験からモノづくりの苦悩や楽しさを沢山学ばせて頂いたことは今でも宝物になっております。ですが、その当時はとにかく生き抜くことばかり考えていました。リーマンショックもあり、リストラも加速。能力がない人は不要とする、どこか冷たい空気感が時代を包んでいました。経営者の立場にあれば、そのような判断をせざる負えない時があるのも理解できます。そんな状況下、ご縁があり長野県に移住しました。自然は美しいし、当たり前に厳しくもあります。それを謙虚に受け止めその内で生きる。創意工夫を凝らすも失敗し…(笑)そんなくだらない話で隣の誰かと笑い合う。自然体で、より人間らしい等身大の暮らしは心地よく、肌に合っていました。長野県の方々のおおらかで温かい雰囲気には、とても癒されます。ですが私は、仕事スイッチが入ると未だに結構厳しい人です(笑) 「鬼!」って、利用者さんによく言われてます(笑)
代表に就いてから大事にしていることは、“コミュニケーション”と“観察”です。 このような関わりを通して、それぞれの個性の豊かさに気付かされました。その個性を大切にして、それぞれに対応を変えて、皆が自分らしくいられるよう支援していると、相手は「自分は大切にされている」という安心感を得て、表情が和らぐようになりました。
仕事をお願いする時も同様です。例えば、赤くなった唐辛子の収穫をお願いしたとき「できた。」というので見てみると、実は全くできていない。そこでは決して怒らず、「これは何色かな?そう、赤色だね。これも取っていいよね。お願いしますね。」と相手を否定せず、気づかせる働きかけをすることを心がけています。
そのような関わりを続けていることで、今では何か諍いがあると「山田さんに相談だ!」と頼りにしていただけるようになりました。(笑)
レストランにリニューアル予定!伝えたいメッセージは“みんなちがってみんないい”
- 最後に、今後の活動の展開について教えてください。
来春に向けて今の事業所をテイクアウト可能なレストランやベーカリーなどが併設する野菜を取り扱う店舗にリニューアルする予定です。利用者の方々にはそれぞれが活躍できる場所で目一杯活躍いただきたいと考えています。併設するベーカリーは就労支援を行う別の事業者様にご協力を仰ぐことで、障がい者全体の雇用の創出に加え、経済的な自立を目標に、事業者同士の横の繋がりも大切に深めていけたらと思います。
さらに「形は不揃いだけど無農薬・無化学肥料のお野菜。不出来だけど可愛い野菜。」を取り扱える店舗も併設したいと検討中です。恐らくかなり試行錯誤ではありますが(笑)自分達だけでは実現が難しいですので、近隣の有機農家さんにも是非参加していただけるよう、野菜をレスキューしていきたいです。そこで余ったお野菜はレストランで提供する料理に活用、それでも余れば必要な方々へ(こども食堂さんや困り事のある家庭などですかね?)配布を行える無駄が一切出ないような循環する仕組みが美しいカタチで機能することを目標に頑張りたいと思います。
この活動を通じて伝えたいことは“みんなちがってみんないい”です。いわゆる“普通”と違ってハンディキャップを持っていても、形が不揃いの野菜であっても、必ず活躍できる場所がある。それぞれは個性であり、その個性が光る場所があれば自然と輝けるはず。
それは健常者であっても同様で、社会からはじき出されたとしても、どこかで活躍できる場所があると信じています。
私自身はとにかく色々なことに興味がありまして、まだまだ学んだり研究したりしたいので、早く農園を若手に引き継いで自由に発想できる時間を手にしたいですね~。そんな自由な働き方ができる会社があれば最高かも!?
「食べ物、教育・音楽/アートなどの文化活動、ITや金融、健康に暮らす知識」人間らしく暮らすために最低限必要な実践的教育。その必要性は強く感じます。子ども達や、ハンディのある方々と共に、大人も一緒に学ぶ場所。周りには様々な才能をお持ちの方が沢山おられますので、皆様と繋がりながら、生き合っていける環境も、いずれ提供できたらと思います。そして引きこもりの方や学校に行きづらさを抱える方々を支援されている地域活動も沢山ありますので、お互いに応援し合えるよう繋がっていきたいです。
【インタビュアーより】 仮面を身にまとう謎めいた雰囲気の山田さん(注:写真撮影の時だけ着用されているので、素顔を見たい方は直接農園へ)。別名①:仮面の理事長。別名②:EMOtional K(EMOK/えもけー)はニックネーム。一言で表現するなら“笑顔をデザインするクリエイティブディレクター”。既存の福祉の枠に囚われない自由な発想で難しい課題を次々と解決。温かな眼差しと明るい雰囲気で周囲を巻き込み、事業所内はいつも会話と笑顔で溢れています。来春にはレストランを開業予定とのこと。若い力で福祉を変える!ますます活躍が期待できる法人です。 (2021.10.15 (株)ウィライ 浅田)
キーワード
#就労支援B型 #障がい #障害 #農業 #ダイバシティー
広告