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- #1443
- 2021.06.21
医療的ケア児をもつ先輩ママらが法人設立、保護者の孤立解消に向けて始動 〜一般社団法人 医ケアの輪 山本 代表理事 へのインタビュー〜
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医療技術の進歩により今後増加することが目に見えている医療的ケア児とその保護者の孤立解消とケアの支援に取り組む一般社団法人 医ケアの輪(http://ikeanowa.site/) 山本 代表理事 に、法人としての取り組みと医ケア児の保護者としての生の声を語っていただきました。
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- 医療的ケア児をもつママさんら4名で法人を立ち上げ
- 医療的ケア児のケア方法と、そのケアに携わる保護者の心のケアに関する本を出版
- 保護者の仕事や、悩みや思いを共有できる場の創出に努めている
- 医療的ケアを必要とする子供の保護者は24時間付き添わなければならない
- 職場から離れた保護者は社会との繋がりが切れ、孤立してしまう
- 在宅で常勤に就ける仕事を探すのが極めて難しいことが保護者の孤立解消の壁
【この記事のポイント】
保護者目線で本を出版、保護者のケアの必要性に気づいて
− 法人として取り組まれていることを教えてください
この法人は伊那市と松本市に住む友人と、フェイスブックで知り合った長野市の方との4人で立ち上げました。全員医療的ケア児(通称:医ケア児)をもつ保護者(ママさん:3名、パパさん:1名)です。法人では医ケア児をケアする保護者や、医ケアの選択に悩んでいる保護者向けに、先輩ママとして伝えたい医療的ケア児のケアの方法や、保護者自身の心のケアにつながる内容を一冊にまとめた本を作成し、販売しております。オンラインショップ(https://ikea-hahashigoto38.stores.jp)でも買えるようになっており、これまでに北海道から沖縄まで全国からご注文いただいております。
この本の特徴は医療の専門家からの目線と、保護者の目線の両面から執筆されていることです。いつもケアの側に置いてあって、気になった時に手に取りたくなる、保護者に寄り添い、頼りになる内容になっています。
この本の作成にあたり、クラウドファンディングで資金を募ったところ、405名の方々から合計約290万円もの寄付をいただきました。内容の構想、編集に関しては私の他11名の看護師や医ケア児の子どもをもつ保護者の方と共に行い、1年間の製作期間を経て出版することができました。
本の出版の他、医ケア児の保護者が作った作品を販売できる場所をオンラインショップ上に設置する等により保護者の仕事を創ることに加え、保護者が必要とする情報を発信しています。
− 医ケア児の保護者の支援に力を入れているのですね。
私自身も当事者ですが、医ケア児の保護者は毎日大変な思いをされています。胃ろうや痰吸引など医ケアを必要とする場合、24時間付き添わねばなりません。当然外で働くことは難しいです。これまで働いていた人は社会との繋がりが突如切れてしまい、収入の減少や働いていた自分という存在の喪失感、学校への送迎や付き添いの負担を知って医ケアの選択に躊躇う方もおられます。だからこそ保護者の方を支援したいと思っています。
お子様のことを第一に考え、医ケアを決断
− そのような大変さが目に見えている中、山本さんは医ケアを選択されましたが、その時は何を考えておられましたか?
私の場合、娘が誤嚥性肺炎を起こしたことがきっかけでした。気管を切開し、食道と気管を分離する喉頭気管分離術の選択を迫られました。この手術により声を失ってしまうのですが、それよりも娘が楽になる方を選びたいと思いました。私の母は元看護師の経験もあって、ある程度の気持ちの準備はできていましたが、家族はそうではなくて。ですから家族とよく相談し、最終的に医ケアの選択をしました。手術により娘は呼吸が楽になって良かったです。
ただ街に娘と出ると、もっと障がいに優しい社会であって欲しいなと思うことがあります。例えばお店や個人病院では入り口に少しの階段があったりして、それだけで車椅子だと入ることを諦めてしまいます。
人間は必ず年をとり、段差などに困難を感じるようになるだろうから自分の未来のためにも障がいに対して優しい世の中であると良いなと思います。
保護者の孤立解消の壁は在宅で常勤に就ける仕事が極めて少ないこと
最後に、山本さんが今一番困っていることは何ですか?
やはり仕事が無い、特に常勤で勤められる仕事が無いことです。在宅でできて、もしくは、時間に融通がきいて、子どもが横にいてもできる仕事は、探していてもなかなか無いのが実情です。娘は今養護学校に通っていますが、地域によっては医ケア児が学校に通うことができず、訪問教育、つまり先生が家に来て教育するという方法が採られているようです。そうなるとどこにも行けなくなりますよね。働くことを通じて社会と接点を持てる様になり、孤立が解消に向かって欲しい、そう強く願っています。
【インタビュアーより】 苦しむお子様のことを第一に思い、医ケアを決断された山本代表理事。今後益々増加することが目に見えている医ケア児とその保護者。当事者だからこそ抱く、同じ境遇にある方々への思いやりと、その強い思いを支える多くの支援者。一つの命を多くの力で支えあう姿は目指したい支え合いの社会の有り様。しかし解消されない保護者の孤立という現状。就労を通して孤立を解消する支援の手が、今まさに必要とされています。 インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。 (2021.6.15@ココス篠ノ井バイパス店 (株)ウィライ 浅田)
キーワード
#医療的ケア児 #医ケア #医ケアの輪 #保護者支援 #障がい #車イス #養護学校
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