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- #1468
- 2021.07.03
子どもの命を支える家族への支援を通じ、心から安心して暮らせる街づくりを目指して 〜一般社団法人 笑顔の花 茅房 代表へのインタビュー〜
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ご自身も重度の心臓病の子を持ち闘病生活を経験した親としての経験から一般社団法人「笑顔の花」(https://egaonohana.org/)を立ち上げ。小児の医療技術の日進月歩の発展により助かる命が増える一方で、ケアを担う家族への社会的な理解や支援は進んでいない。拡大する社会的な課題にいち早く取り組まんとする茅房 代表に取り組みとその想いをインタビューさせていただきました。
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- 重い病気の子とその家族の社会的な支援が十分でないことを当事者として痛感
- 病院内での保護者向けのお弁当提供サービスの発案等を経て法人設立
- 遠方から病院へ訪れる家族向けに宿泊所「マザーハウス」開設
- 有志とボランティアによる運営であっても“できる時に”“できる人が”“できる分だけ”協力してもらう体制で安定的に運営
- 障がいに関心にある方とそうでない方の間にある壁は依然として大きい
- 福祉、教育、制度面から地域に根ざした活動に取り組むことで、命ある全ての人々が暮らしやすい街の実現を目指す
- 活動のエネルギーの源泉は、純粋な“愛”
【この記事のポイント】
医療技術の発展の陰で進まない保護者への社会的支援
− 一般社団法人「笑顔の花」の設立経緯を教えていただけますか?
きっかけは長女を妊娠したときのことです。まだ産まれる前から長女の心臓に重い障がいがあることがわかりました。通院していた長野県立こども病院から100km離れた場所に住んでいましたが、出産前の検査、そして出産後の次女の入院付き添いで自宅から通う日々を過ごしていました。
付き添い中、保護者は暖かくて栄養のあるご飯を食べることが難しい、ゆっくり体を休められる場所や気分転換する場所もありません。高度な医療技術を有する病院であることから、全国から訪れてくるご家族も少なくありません。20代前後のお母様もおられたり。自分と同じ苦難を経験している保護者らを見ていて、子どもの命を支える保護者や兄弟への支援が十分では無いことを目の当たりにしました。
そこでまず始めたのが、病院内で保護者用に栄養のある手作り弁当と汁物の提供です。病院関係者に掛け合って許可を得たことで、お弁当事業を営む知人の協力を得て実現することができました。
一方で医療的ケアを必要とする長女の看護は孤軍奮闘の毎日でした。同じ境遇にある仲間同士では励まし合っていたものの、それ以外の方々からは中々理解されず、社会的にも孤立しがちでした。保護者を支援する制度はもちろん、障がいを取り巻く環境に対する社会的な理解も不足している課題に直面したことから、この課題解決のために、一般社団法人 「笑顔の花」 を立ち上げました。
その後、こども病院に通いながらケアに奮闘する保護者たちのココロとカラダを休ませられる場所として、病院近くの場所に「マザーハウス」を設立しました。ここでは遠方から通院する病児家族の宿泊所として、または就労やセミナーの場、時にはお茶を飲みながら交流する場として、様々な形で支援する場所となっています。
関心のある方とそうでない方の間にある大きな壁
− 法人、ならびにマザーハウス設立後に得た新たな気づきはありますか?
困っている方のために何かやりたい、と思われる方が実はたくさんいることです。ただ何をやりたいか、までは具体的に描けていないことが多いので、こちら側からテーマを掲げると、テーマに対して得意な方が積極的に協力してくださります。例えば、災害支援物資の場合、140サイズ、女の子、防寒着・上下と具体的に発信、呼びかけをすると、ピンポイントで届けてくれる人がいる。平日の午前中、病児のきょうだいの見守りをしてくれる、こども好きな人、探してますと言うと、希望通りの方から連絡があります。組織体はないのですが、“できる時に”“できる人が”“できる分だけ”協力して下さることで成り立っています。
一方で、難病や障がいを持つ医療的ケア児に対する理解について、市民はもちろん、行政さえも理解が足りていないのを実感します。現代はインターネットの普及により興味がある人はすぐに調べられますし、SNSを通じてすぐにつながる。しかしそれ以外の興味のない人の間には大きな壁があるように感じます。それがインターネットの世界だけでなく、身の回りの地域でもそれを感じます。問題を抱えている人は知ってもらえるだけで安心します。知っている人と知らない人をつなぐこと、そして地域に根を下ろした取り組みをすることで、困難を抱えている方々が暮らしやすい街にしていきたいと思っています。
心のバリアフリーを目指して活動、そのエネルギーの源は“愛”
− バリアフリーのインフラが整ったからといって、障がいを持つ方にとって暮らしやすい街とは言えない、ということですか?
まさにそうですね。極端な言い方をすれば、一人一人に支え合う意識があればバリアフリーなインフラが無くとも、人手を借りながらある程度の生活ができると思います。しかし現実はそうではない。障がいのある方、またはその保護者に対する目に悲哀を感じることがしばしばあります。当事者としては普通に接して欲しいのです。小さい子どもなら普通に接してきます。つまり大人自身が自分で自分に壁を作っているのです。バリアフリーなインフラが、皮肉にも心のバリアをつくってしまったのかもしれません。福祉、教育面に加え、就労機会の創出から行政の制度面まで、幅広い視点からこの状況を変えていきたいと考えています。
− ご自身を突き動かすエネルギーの源泉は何でしょうか。
“愛”、ですね。それ以外にありません。まだまだ未来のあるお母さん達が社会的に孤立しながらケアに奮闘している。高度な医療を要する環境で医療従事者の方々も同様に奮闘されている。たくさんの方に支えられて子ども達が必死に生きている。つまり一つの命を皆で必死に支えている。この方々を支えてあげたい。それは自分の子どもにお弁当を作って送り出すのと何ら変わらない、元気で幸せであって欲しいと願う、純粋な“愛”なんです。
【インタビュアーより】 心臓病のお子様を育てる当事者として経験した保護者自身の抱える課題だけでなく、障がいを取り巻く社会環境まで俯瞰して課題を把握され、解決に向けてエネギッシュに活動される茅房代表。その源泉は“愛”だとシンプルに言い切る姿は、社会課題の解決に奮闘される方々に共通する人間味あふれる温かい眼差し。医療的ケア児を含めた多様な障がいへの理解と一人の人間として眼差しを向けることが、今私たちに求められていると感じました。 インタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました。 (2021.6.29 (株)ウィライ 浅田)
キーワード
#障がい #障害 #医療的ケア #保護者 #ケア #子ども
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