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- #1309
- 2021.05.06
持続可能な社会の実現に向けたメッセージをデザインで表現し続ける〜株式会社エコマコ 企画チーフ 酒井さんへのインタビュー〜
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大量生産大量消費時代に目の当たりにした大量のゴミに危機感を覚え、1994年に日本初の清掃工場でのファッションショー「環境とファッションの共生」を開催するなど、いち早く持続可能な社会に目を向け、取り組まれてきた株式会社エコマコ(https://ecomaco.com/)。75年間続くグループの岡学園トータルデザインアカデミーが主催したMy SDGs展(https://okagakuen.com/mysdgs/)の内容と合わせて、人間力を育む取り組みについてお話しいただきました。
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- 株式会社エコマコは、単なる洋服メーカーに留まらず、洋服の製造・販売の周辺を俯瞰的に捉え、幅広い世代に対して、持続可能な社会の実現に向けた人生のライフスタイルをデザインしている
- グループの岡学園トータルデザインアカデミーでは、デザインの技術力と同等に「人間力」の教育に力を入れている
- 人間力はマナーや自己認識力、共感力を高めることで培われ、そのために多くの外部講師と接触する機会を創っている
- ヒトとモノの周辺にあるコトに目を向け、そこから発送するモノをヒトに届ける時代であり、SDGsはその糸口となり得る
【この記事のポイント】
物事を俯瞰的に捉え、一歩先のライフスタイルを提案
― 株式会社エコマコは大量生産大量消費の時代から一早く環境配慮への取り組みをなされています。これまでの経緯を教えてください。
戦後間も無くの1946年、岡 久子により岡学園トータルデザインアカデミー(旧ドレスメーカー研究所)(以降、岡学園)が設立され、そこでは技術力と等しく重要な能力として「人間力」の育成に注力してきました。その岡 久子に育てられた岡 正子(以降、正子)が株式会社エコマコの代表を務めています。その正子が1990年代に清掃工場の建て替えで工場に訪れた際、大量のゴミと一緒に大量の服が捨てられていることを目の当たりにしました。当時は大量生産、大量消費こそが豊かさの象徴であった時代、「このままでいいのか。」と直感的に感じた正子は、環境問題を知ってもらう機会を創るため、清掃工場で日本初のファッションショーを1994年に開催いたしました。その後1998年に長野冬季オリンピックにて文化プログラム「Fashion for the Earth」をプロデュースし、そこでトウモロコシのデンプンから作ったポリ乳酸繊維の服を発表いたします。ECOMACO長野店のオープンを経て、今ではポリ乳酸繊維で作られたウェディングドレスのデザイン・販売することで、若い世代にもメッセージを伝えることに取り組んでいます。
洋服の生産の傍ら廃棄される端材の再利用にも取り組んでいます。端材を100色余りに染色し、それらをパーツで思い思いの小物を作る親子参加型のワークショップ「ひかりのかけら」プロジェクトを企画し、東日本大震災直後に被災地での開催を皮切りに、全国で開催しています。色に対する感性を育む「色育」に取り組むことに加え、そこで使用するパーツを高齢者施設や障がい者就労支援施設に製造委託することで雇用の創出にもつなげています。運営側に岡学園の学生にも参加してもらうことで、人間力を高める教育の場としても活用しています。
単なる洋服メーカーに留まらず、洋服の製造・販売の周辺を俯瞰的に捉え、幅広い世代に対して、持続可能な社会の実現に向けた人生のライフスタイルを提案・デザインできることを目指しています。
俯瞰し、共感し、デザインする、SDGsはその糸口
− 人間力を育む取り組みは、岡学園ではどのように実践されているのですか?
ファッションデザインだけできれば社会で活躍できるわけではありません。他人同士で円滑に仕事を進める以上マナーは欠かせないことから、一般的なマナーから国際的なマナーまで幅広く学んでいます。加えてEQの教育にも力を入れています。自分の得意不得意を自認させ、教師陣が得意な点を伸ばし、不得意な点を補うサポートをしています。また25年前から様々な分野で活躍されている方々を外部から講師としてお招きし、様々な人と接し、幅広い分野の知力を養うことで共感力を高めることにも注力しています。
今の時代、机に座っていただけではお客様の共感を得るデザインはできません。お客様のことはもちろん、製造・販売に携わる方々と話すことで新しいものが生まれてくる、その俯瞰力を養えるよう学生を教育し、実践の場を提供し続けています。
― 今回「My SDGs展」(2021/4/10 - 5/16 長野県立美術館にて開催)というイベントを企画されましたが、SDGsに関しての教育にも力を入れているのでしょうか?
簡単な授業を実施しただけで、あとはイベント名に「My」がついているように、学生自身が自分事としてSDGsを捉え、どうデザインすれば自分以外の方に伝わるかを考えてもらいました。一例を紹介します。
① 小さな先生たち 学生自ら小学生に赴き、小学生と一緒にSDGsとは何かを考え、それを短歌にまとめました。この企画はもちろん、小学生であっても深く考えられていることに驚きました。
② うちの子SDGs 「SDGsは皆で一緒に考えていかねばならない。」と感じた学生が、考えを共有する場としてSDGs専用のSNSアプリケーションを立ち上げました。いいね!やコメントもできます。
③ 神様からの贈り物 この学生は感覚過敏の障がいを持っていて、モノが人と違って見えてしまう。その感覚を他人と共有したいとの思いからデザインしました。多様性の理解という社会課題がありますが、他人と異なる部分を勇気を持って表現することで理解し合えることにつながるヒントではないでしょうか。
④ Planestic 川に落ちているプラスチックゴミから作ったアクセサリーです。川で見つけた様々な色のプラスチックゴミを溶かし、型に流し込むことで、まるで惑星のような色合いの不思議なアクセサリーになりました。アート性とメッセージ性を兼ね備えた完成度の高いデザインです。
ご覧になられ作品は全て学生自ら考え、行動し、デザインしたものです。モノだけでなく、その背景を俯瞰し、課題に共感し、浮かんだメッセージをデザインに込める。学生であってもここまで表現することができるのです。
これまではヒトとモノがあれば経済が回っていたように思いますが、これからはコトが不可欠だと感じます。ヒト、モノ周辺にあるコトに目を向け、そこにある課題の解決やメッセージを伝えるモノをヒトに届ける。SDGsはまさにその視点を与えてくれるものと感じています。
【インタビュアーより】 目の前の物事を俯瞰的に捉え、共感する力、一言で表すと「人間力」を学生時代に育むことの重要さを改めて認識しました。社会に出れば目の前の仕事に追われる毎日。じっくり腰を据えて学べる学生時代に人間力を育むことが、より良い社会の実現に不可欠であること、そしてその問いを与えてくれるのがSDGsであると感じました。インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。 (2021.04.22@長野県立美術館 (株)ウィライ 浅田)
キーワード
#持続可能 #デザイン #SDGs #学生 #エコマコ #色育 #共感力 #俯瞰力 #環境 #エコ
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